このサイトは 「本郷美術骨董館」をスポンサーとして、Zenken株式会社が運営しています。
「フォト・ペインティング(写真投影法)」とは、戦後ドイツを代表する芸術家であるゲルハルト・リヒターが展開した美術手法をいいます。雑誌や新聞などに掲載された白黒写真のイメージを、精密にコピーしたうえで微妙にぼかし、絵画に落とし込むというものです。
具体的には、実際の切り抜きなどをキャンバスに写し、その輪郭を正確になぞって描いていきます。また、プロジェクターを用いて、キャンバスに大きく投影するという方法もとられたようです。 ゲルハルト・リヒターは、主に1960年代(とくに1962年~1966年)に、この手法による絵画作品を生み出しました。
フォト・ペインティングが、単なる写真の写し画と違うのは、その不鮮明でボケたような仕上がりです。リヒターは、写真を忠実に写しとった後に、布や絵筆等を使って表面をこすり、わざと輪郭をぼかす作業を行いました。そうすることで、ピントの合っていない写真のような仕上がりになるのです。
この手法について、「あまりに鮮明に写しだす本物の写真を椰楡している」「現実を忠実に写しとるという役割を写真機に奪われてしまった、現代の美術の状況を表現している」といった評論もあるようです。
そんなフォト・ペインティングの代表的な作品のひとつが、新聞の写真をモチーフにした『机』です。1962年に制作されました。また、1966年の作品『エマ(階段のヌード)』も有名。フォト・ペインティングの初期作品はほぼ白黒ですが、この作品はポラロイドカメラを使って撮影した妻のヌードを、カラーで表現しています。
さらに、『ベティ』『ムスタング』といった作品は、フォト・ペインティングの油彩画をプリントにしたエディション作品となっています。
引用元:Gerhard Richter https://www.gerhard-richter.com/en/art/paintings/photo-paintings/household-icons-39/table-4954/?&artworkid=1&info=1&p=1&sp=32
引用元:Gerhard Richter https://www.gerhard-richter.com/en/art/paintings/photo-paintings/nudes-16/ema-nude-on-a-staircase-5778?&categoryid=16&p=1&sp=8&tab=associated-works-tabs
モデルとなったエマはリヒターの奥さん。他にも娘をモデルにした「ベティ」という作品もあります。
譯あつて同期が書いたリヒターのフォト・ペインティングについての卒論を讀んだが、すんごく面白かつた
— 輪華 (@ogatakourinpa) March 7, 2020
讀むのに時閒がゝゝつたが、現代美術つてかうみればいゝのかと思つたし、槪念を解析してゆく展開に讀み應へがあつた
BHVR展.
— よこやま よしのり (@inmynikke66) September 24, 2019
millitsukaさんのモニターに映るデジタルのイメージをアクリルで絵画に転換する作品が印象的だった。研究中のフォト・ペインティングと共通して、その時代の新たなメディアに依拠しながらいかに絵画が機能するかということを考えさせられた。#BHVR展 pic.twitter.com/ISZICZWyu2
フォト・ペインティングで検索すると、ゲルハルト・リヒターしか出てこないくらい、イコールで結ばれた存在です。彼はプライベートの写真や報道写真を元に、写真から絵画へ、また絵画から写真への往還をくり返す手法を取っています。
現代アートから骨董・古美術までを扱う「本郷美術骨董館」代表。20歳から草間彌生の作品を集めているコレクターでもある。BSフジで放送中の、若手日本アーティストを紹介する番組「ブレイク前夜~次世代の芸術家たち~」制作提供も行っている。お店では鑑定をするかたわら、テレビ・ラジオなどにも出演し、現代アート界を盛り上げている。
リヒターによるフォト・ペインティングの第一弾作品。新聞の報道写真を元にした油彩画です。
ゲルハルト・リヒターはこちらのページでも紹介しています。