このサイトは 「本郷美術骨董館」をスポンサーとして、Zenken株式会社が運営しています。
ビジネスアーティストとして名をはせるハースト。その資産額はなんと2億1500万ポンド、日本円に換算すると約315億!
Damien Hirst。イギリスの現代美術家・実業家・コレクター(1965年~現在)。「YBA(Young British Artists)」の中心的人物として知られ、死んだ動物をホルムアルデヒドで保存したシリーズが有名です。
生まれはイギリスのブリストル。12歳の頃に父親が家を出るなど恵まれた幼少期ではありませんでしたが、「Leeds College of Art」や「ゴールドスミス・カレッジ」で美術を学びます。
1988年には、大学在学中ながら、自主企画展覧会「Freeze」を主催。ここから、YBA(Young British Artists)と呼ばれる若い芸術家たちが、世界へ羽ばたくことになります。もちろん、ダミアンハーストもその一人です。
ダミアンハーストの作品は「生と死」をテーマにしたものが多く、サメをホルムアルデヒドのタンクに沈める、牛を真っ二つにして酢漬けする、といった衝撃的な作風でイギリス美術界に議論を巻き起こします。
1993年には、「ベネチア・ビエンナーレ」にイギリス代表アーティストとして出展し、作品『Mother and Child, Divided』が高い評価を得ました。また1995年には、イギリスで現代美術のアーティストへ贈られる「ターナー賞」を受賞しています。
ダミアンハーストは、ビジネスとしてアート活動をする芸術家としても知られており、2008年には、前例のない行動で美術界を驚かせます。なんと、自身の作品を、ディーラーやギャラリーを通すことなく直接オークションにかけたのです。
しかし結果は大成功。落札総額は1億1,100万ポンド(約211億円)に達し、1人の芸術家の作品落札総額として、当時最高記録を樹立しました。単体で高値がついたのは、子牛のホルマリン漬け『The Golden Calf』です。1,030万ポンド(約19億円)での高値落札となりました。以下はそのときの写真です。
このとき僕がはじめてつくり出したのは、コントロールできない独自の生を持ったもの、僕のコントロールの外にある何かだった。「僕はいったい何をやっちまったんだ?」というフランケンシュタイン的な瞬間を味わった。最初のハエが殺されたときは「おっと、ファック」って感じだったな。
1993年の作品。なんと真っ二つに切断された牛と子牛をホルマリン漬けにしたものです。
死骸を使った作品群はホルマリンを使用していますが、2018年ごろにはこのシリーズから有毒な発がん性物質「ホルムアルデヒドガス」が検出されました。
蝶が苦手な人にはたまらない作品。
こちらは昆虫をテーマにした「Tityus」(2012年)。よく見ると、昆虫の立体感がわかります…。
金銭はモチベーションではなく、ひとつの要素だと見なしている。お金を無視することはできない。が、金銭がモチベーションにならないように、とても注意しなくてはならない。
稼いでいるからこそ、お金がらみの発言が多いダミアン。「絵画が何百万ポンドにも高騰し、たった1人の人間しか所有できないことに困惑をおぼえている。学生部屋の壁に貼られるポスターのようになれば羨望されるだろう。いずれ500ポンドのダミアン・ハースト作品を手がけてみたい」「金は眼中にはない」「お金は誰にとっても重要だ。なぜなら金がないことはとても辛いことだからだ」などの発言もあり、矛盾しているように感じるものもありますが、その時々の本当の気持ちなんでしょうね。
私はただ、境界線がどこなのかを見つけたかった。でも境界線など存在しないと分かりました。誰かに止めてほしかったけど、誰も私を止めはしないでしょう。
生と死をテーマにしてきたハーストが自然に湧き起こる絵画の楽しさを見直し、「美と生と死」をテーマにした新シリーズ「Cherry Blossoms」。
2020年6月〜11月まで、パリにあるカルティエ現代美術財団で見ることができます。
動物の死骸をホルマリン漬けにしたり、真っ二つにするなどの衝撃的な作品を生み出してきましたが、酷評も多いのが事実。
「最近では自ら描いた絵画の衝撃的なひどさで世間をあっと言わせている」(2009年・AFP記事より)、「バジェットありきで下品」「制作物としては最高、だがコンセプトが空っぽ」(2017年・VOGUEより)などの辛辣な意見も。
私たちは批評家ではないので、なんとなく好きとか、なんとなく苦手とか、好きに楽しめばいいでしょう。
ホルマリン漬けで一躍有名になったハーストが、自ら筆をとってかいたものが酷評された。
その影響か、この年の今年の現代アート界で最も影響力のある100人のリストで、順位が急落するという、さんざんな結果に。
「最悪なことにハーストの絵画は素人っぽくて青くさい。筆遣いには、見る者に画家が創作したものを信じさせるだけの活力や勢いがない。ハーストはそれすらも身につけていない」(ガーディアン紙)
「作品1つ1つを見ようとすると問題が起こる。集団ではインパクトがあるが、1つ1つでは合格レベルに達していないものが多い。細かなところはためらいがちに塗られていて、よく見ると構図は破綻している」(デイリー・テレグラフ紙)
続いて紹介するのは、2017年にヴェネチアで開催した個展「Treasures from the WRECK of the Unbelievable」。
タイトル通り「難破船から引き揚げられた財宝を展示している」という「ウソ」のプレゼンテーションだ。
引き揚げられたという「ウソ」のアートワークと、引き揚げ時に撮影されたという「ウソ」の記録映像で構成されている。「ウソ」だと感じさせないために作り込まれたアートワークの魅力と、「ウソ」だと伝えるためのネタバラシの面白さが混在している。
3階建て相当の彫像。ダミアン・ハーストという、巨額の富を持つアーティストだからこそできる作品という部分が下品に感じるか、インパクトがあって楽しいと感じるか…。
見覚えのあるキャラクターも続々。ミッキーや日本のアニメ、ガンダムも。
ダミアン・ハーストのホルマリン漬けの鮫は高額で買った所有者の要望により修復され、中の鮫が新しい個体と交換された事がある。結局従来の芸術と同じように扱われてしまったというようにも見える。
— アブジェクトアートbot (@AbjectArt_bot) March 4, 2020
「汚く無価値である泥をこね、焼き物という価値あるものを作り出すことに力を注ぐ」これは現代アートの所作なんだけど、太田垣蓮月は評価される作品を作りたいとか、高額で販売したいとか、煩悩を滅殺した上で制作している。もしかするとダミアン・ハーストも、その領域を目指しているのかもしれない。 pic.twitter.com/hOidAkgsVR
— 笹山直規 4月2日個展 渋谷 Room_412 (@nega_death_13) January 31, 2020
もし、ダミアン・ハーストが本当に素朴に「絵を描くの楽しいな。」ってなってあれやってたら、脳を検査してあげたほうがいい。でも、絶対にそんなことがないことはあのわざとらしい恰好とコメントからよくわかる。しかも親切に顔面に絵の具までつけてボケてくれている。ダミアン大好き!
— (邱和宏) (@QueHouxo) January 31, 2020
よく「死と経済」と形容されるように、作品ではとことん死にこだわり、またビジネスマンとしても、非常に有能なアーティストです。彼の影響でギャラリーに所属しない作家も増えています。
現代アートから骨董・古美術までを扱う「本郷美術骨董館」代表。20歳から草間彌生の作品を集めているコレクターでもある。BSフジで放送中の、若手日本アーティストを紹介する番組「ブレイク前夜~次世代の芸術家たち~」制作提供も行っている。お店では鑑定をするかたわら、テレビ・ラジオなどにも出演し、現代アート界を盛り上げている。
今やおなじみの、ガラスケースを用いた初のハースト作品。
奥に見える白い箱にはウジ(ハエの幼虫)が培養されており、手前にあるのは牛の頭。牛の頭が設置されたボックスの上部には殺虫灯が設置しており、そのため牛の頭の周りには死んだハエがたくさん。