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ジョン・ケージ(1912年~1992年)は、20世紀のアメリカ合衆国を代表する音楽家・作曲家・詩人です。幅広い分野で活躍したアーティストであり、中でも前衛的な実験音楽は、それまでの西洋音楽の概念を根本から壊すもので、人々に大きな衝撃を与えました。
また、キノコ研究家としての意外な一面も知られており、キノコからも作品や思想のインスピレーションを得ていたと言われています。ケージがキノコ好きになったきっかけは、辞書で"music"を調べてみたら、1つ前に"mushroom"があったからだそうです。
そんなジョン・ケージの生まれは、カルフォルニア州のロサンゼルス。幼少期からピアノを習い、クラシック音楽を弾いていました。アメリカの大学を中退後、フランス・パリに滞在中は、建築を学んでいたこともあります。
アメリカ帰国後は、アルノルト・シェーンベルクに師事。シェーンベルクから大きな影響を受けると同時に、西洋音楽の作曲に欠かせない、和声の感覚がないことを指摘されてしまいました。その後、打楽器による音色の探求をはじめたケージ。1940年には、ピアノの弦にゴムや木片などの異物を挟んで打楽器のような音色を出す、「プリペアド・ピアノ」を発明しています。
1950年代に入ると、中国の占いである易経を使った作曲技法や、図形が描かれた楽譜で奏者の即興に任せる作品など、「偶然性の音楽」を創始しました。1951年にハーバード大学で無響室を体験したことも、その後の創作に大きな影響を与えています。無響室で自分の体内の音を聴き、完全な沈黙は不可能と考えたケージは、演奏を一切せず、会場内の偶然的な音を作品とする『4分33秒』(1952年)などを生み出しました。
『4分33秒』の続編となる作品。ちなみに、『0分00秒』は、演奏時間が「0分00秒」という意味ではありません。こちらも楽譜に音符はなく、「独奏で、誰が何をしてもよい」など、言葉によるいくつかの指示が書かれています。演奏者は日常的な「ある習熟した行為(歯磨き、字を書くなど)」をおこないますが、すでにやったことのある行為や、演技などの小細工をしてはいけないとのこと。
この作品の初演は、万年筆や灰皿にマイクをつけたジョン・ケージが、この『0分00秒』の楽譜を書くというものでした。静かな『4分33秒』とは打って変わって、楽譜を書きながら水を飲んだりタバコを吸ったりする音をマイクで増幅させて、会場を大音響で満たしたそうです。
曲名にあるASLSPは「As slow as possible」という意味で、できるだけゆっくり弾くことを目的としたオルガン曲です。そのため、最長演奏時間は無限とも言えますね。
この曲は、ドイツのハルバーシュタットにあるブキャルディ廃教会で、2001年から639年にかけて演奏されているところです。2020年9月には7年ぶりに和音が変わったのだとか。次に和音が変わるのは2022年2月5日。演奏が終わるのは2640年の予定なので、後世の人々に見届けてもらいましょう。
もし誰かが「できない」と言ったなら、それは、あなたがなすべきことを示しているのだ。
従来の西洋音楽の概念を覆した実験的な作品で、多くのアーティストに影響を与えたジョン・ケージらしい名言です。
我々がする全てのことは音楽だ。
『4分33秒』の「演奏」について、ジョン・ケージが述べた言葉。この発言の通り、楽器の演奏をせず、その場で聞こえるすべての環境音を「音楽」として提示してみせたわけですね。
2012年9月、ジョン・ケージの生誕100周年を記念して、音楽家・渋谷慶一郎プロデュースによるコンサートが、愛知芸術文化センター小ホールで開催されました。ジョン・ケージが晩年に制作した「ナンバーピース」と呼ばれる連作の中から、「One」シリーズの同時演奏やパフォーマンスを披露。出演者は、渋谷慶一郎(ピアノ)をはじめ、多井智紀(チェロ)、辺見康孝(バイオリン)、Salyu(ボイス)、飴屋法水(不確定楽器)、evala(コンピューター)ら豪華アーティスト。渋谷がこだわった10.2chのサラウンドシステムによる豊かな響きで、ジョン・ケージが遺した作品の新たな可能性を体感できるコンサートとなりました。
ジョン・ケージのこのアルバム、民族テイストでかなり良い。この人ほど曲を聴いたことないが知られている人もいない気がする。https://t.co/tAR2WShjTG
— 志貴 (@shikixxy) December 10, 2020
Spotifyがまた止まったよ、この馬鹿。と思ったら、ジョンケージの4分33秒だったんだよね。ほんとの話なんだよね。出来過ぎだけど。笑。
— ジャグ (@torikeraburonto) December 7, 2020
現代アートから骨董・古美術までを扱う「本郷美術骨董館」代表。20歳から草間彌生の作品を集めているコレクターでもある。BSフジ で放送中の、若手日本アーティストを紹介する番組「ブレイク前夜~次世代の芸術家たち~」制作提供も行っている。お店では 鑑定をするかたわら、テレビ・ラジオなどにも出演し、現代アート界を盛り上げている。
ジョン・ケージの代表作といえば、この『4分33秒』を挙げる人が多いのではないでしょうか。楽譜には音符がひとつも書かれておらず、決まっているのは4分33秒という演奏時間のみ!そのため、演奏者は4分33秒の間、一切楽器を演奏せず、ひたすら静かな時間が流れます。静まり返った会場内で生じる様々な音そのものが「音楽」というわけです。
実は、第1楽章から第3楽章まであるこの曲。いくつか存在している楽譜には、「第1楽章休み・第2楽章休み・第3楽章休み」とだけ書かれているものや、タロットカードを使って決めたという各楽章の長さが書かれているものがあります。