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好き嫌いがハッキリわかれる、強烈な作風のアーティスト。
2018年京都造形芸術大学で開催された公開講座のなかで講師の一人である会田誠氏の講座を受講した女性が急性ストレス障害となり、批判した事件は有名で、芸術に対する扱い方など大きなバッシングを受けたこともあるほど。日本画に影響を受けながらも性的でインパクト抜群な彼の作品は、人によっては目を背けたくなるかもしれません。
そんな会田誠は1965年新潟県に誕生。父親は社会学者で新潟大学の名誉教授も務めた人物です。幼少期は非常に落ち着きのなかったそうで。会田誠氏も「飽きっぽいため、同じ絵を描き続けることができない」と述べています。
新潟県立新潟南高等学校を卒業し、1989年に東京芸術大学の油画を専攻し、1991年に東京芸術大学大学院を修了しています。大学在学中に小澤剛氏や加藤豪氏らと同人誌「白黒」を発行するなど活躍しており、1993年にはレントゲン藝術研究所が開催している「fo(u)rtunes part2」でデビューする運びになりました。
その後の活躍は幅広く、2004年森美術館で開かれた「六本木クロッシング:日本美術の新しい展望2004」、2006年にシンガポールで行われた「ビリーフ」、2007年には「「アートで候 会田誠・山口晃展」、2011年には「バイバイキティ!!! 天国と地獄の狭間で―日本現代アートの今―」、2012年には「ベスト・タイム、ワースト・タイム 現代美術の終末と再生」など世界各国で展覧会が開催されています。他にも昭和40年生まれのアーティストによる「昭和40年会」にも参加し、多くのアーティストと交流の場を持っているようです。
プライベートでは、2001年に現代美術家として活躍している岡田裕子と谷中墓地にて式を挙げています。その後、息子も誕生。また妻の岡田裕子氏が主宰しているオルタナティブ人形劇団の「劇団☆死期」にも参加するなど、小説や映画の制作、出演、フィギュア制作など様々な分野での活動を展開。
ただ活動の幅を広げている一方、数多くの論争や訴訟に関係しているのも事実です。性暴力や全裸の女性が排泄しているシーンなどを切り取った作品が多く、その展示を行った美術館に抗議されることも。欧米メディアの一部からは、会田誠氏の作品は「bad boy」の象徴的な芸術として受け取られているケースもあり、全く異なった意見が交わされています。
女性がキングギドラに犯されているデザインで、会田誠氏らしさが詰まった作品として有名です。この作品だけ見れば、この作品が評価される理由が分からないという人も多いでしょう。この作品は浮世絵や明治期の日本画など様々な日本的ともいえる技術がふんだんに使われています。この作品の構図は葛飾北斎の「蛸と海女」という浮世絵のオマージュ。またキングギドラが食いちぎっている内臓には血がほとんど描かれていないのも会田氏ならでは。無残さや残忍さをトコトン描くのではなく、どこか偽物の人間的な要素が感じられます。
「オナニーとはセックスの前段階にある代替品ではなく、独立した価値を持つ人生の目的そのもの」
2012年11月から2013年3月にかけて森美術館にて「会田誠展 天才でごめんなさい」という個展が開催されました。その個展では「食用人造少女・美味ちゃん」や「犬」シリーズなど様々な作品が展示されており、女性が巨大なゴキブリ像と性行為を行っている写真をはじめ、少女が食べ物として焼かれ食べられているような作品、ジューサーで無数の少女や女性が潰されているような作品など、女性の尊厳を傷つけていると問題視されています。とくに公共の空間とも言える美術館で展示されることに対して、市民団体などが批判したのでしょう。海外からも「欧米では女性や子供に対する暴力を認めるような作品が美術館など公の場で公開されることはない」と森美術館での展示自体を厳しく批評。もちろん森美術館側も18禁コーナーを設ける、注意文を貼るなど適切な配慮を心掛けていると報告しています。この論争に関して世論でも意見は様々に分かれており、配慮されていれば問題はないといった声も聞かれました。
ただ、この論争が起こった後も2018年森美術館にて「MAMコレクション008: 会田誠とChim↑Pomのカラス」が開催されています。この展示ではカラスをテーマに描かれた作品が発表されており、暴力を直接描くような作品はありませんでした。ただカラスが咥えているものなど細かくみれば、会田誠氏らしいデザインになっています。
現代アートから骨董・古美術までを扱う「本郷美術骨董館」代表。20歳から草間彌生の作品を集めているコレクターでもある。BSフジで放送中の、若手日本アーティストを紹介する番組「ブレイク前夜~次世代の芸術家たち~」制作提供も行っている。お店では鑑定をするかたわら、テレビ・ラジオなどにも出演し、現代アート界を盛り上げている。
会田誠氏が開いた「道程」という個展のメインビジュアルとして採用された作品です。女子高生をモチーフにすることが多い会田氏らしい作品であり、日本画家として著名な東山魁夷氏の「道」のパロディー作品としても注目されています。セーラー服の女子高生の紙の分け目が、そのままあぜ道へと続いているようなデザインは、何ともしれない違和感を抱き、吸い込まれるような感覚を味わうことでしょう。ただ会田氏の作品の中では比較的エロティックさやグロテスクさが抑えられているのではないでしょうか。