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天井から吊り下げたロープにつかまり、足を使って裸足で作品を描く「フット・ペインティング」で知られる白髪一雄。ハワード・シュルツ氏(スターバックスコーポレーションの会長兼社長兼最高経営責任者)の専用オフィスルームに飾られている「臙脂」、千葉市美術館蔵の「陽華公主」、兵庫県立美術館蔵の「作品Ⅰ」、くしくも盗難被害で有名になった「作品B」など、数々の名作を残してきた現代美術の巨匠として知られています。
1924年(大正13年)、兵庫県尼崎市に生まれた白髪。幼い頃から描画をよく好み、時間があればいつも絵を描いているような少年だったと言われています。
兵庫県立尼崎中学校(現・県立尼崎高校)時代に絵画部で活動したことをきっかけに、卒業後は京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大学)に進学。日本画を専攻し、本格的に絵画を学び始めました。
1952年(昭和27年)には、村上三郎や金山明らと「O会」を結成。3年後の1955年(昭和30年)には、吉原治良が率いる前衛芸術団体「具体美術会」に参加しました。
大学卒業後には洋画に転じ、人物画や風景画などの数々の作品を描いていたものの、ある時期から独自の「フット・ペインティング」なる手法を開発。天井から吊り下げたロープに両手でつかまり、足を使って作品を描くという前衛性極まる技法でした。70代に入ってもなお、白髪は「フット・ペインティング」を続けたとされています。
2000年代には海外のアートマーケット等で「具体美術会」が注目され、中でも特に高額で落札される具体アーティストとして白髪の名が知られることに。国内のみならず、海外にも白髪の存在が有名になった時期でした。
文部大臣文化功労者表彰、兵庫県文化賞、尼崎市民芸術賞など、数々の名誉ある表彰を受賞。密教に関心を抱き、比叡山延暦寺で得度を受けた履歴もあります。
2008年(平成20年)、敗血症のため83歳にて他界。
比叡山延暦寺での修行を終えた後、スキージ(長いヘラ)で円相を描く作品を多く製作。しかしながら、スキージでの円相の描画は思ったように上手くいかず、改めて「フット・ペインティング」に回帰。「群青」を含め、密教と芸術を融合させた数々の名作が「フット・ペインティング」から生み出されました。
白髪一雄といえばフット・ペインティングの作品が知られていますが、「赤い材木」は4本の赤い材木を組み合わせた立体作品となっています。こちらの作品は「具体美術協会」に携わり始めた頃の実験的な作品ともいわれています。
「長義」は1961年に描かれた、白髪一雄の作品のひとつです。フット・ペインティングを用いることによって赤一色でダイナミックに描かれており、非常に印象的な作品となっています。
以前から密教に関心を寄せていた白髪一雄は、比叡山の本格的な修行を経て1971年に得度。この「諸仏舌相」は得度後に制作が行われた作品です。こちらの作品をはじめとして、この時期の作品には仏教的なイメージを感じさせる作品が多く制作されています。
「静」と「動」が共存する「密教シリーズ」の作品のひとつ。宇宙を思わせる雰囲気が特徴であり、色彩がぶつかり合う中に描かれている円は足に装着した板を回転させながら描かれたものとなっています。
1961年に制作された作品。こちらの作品もフット・ペインティングにて描かれた作品となっており、非常に力強さや激しさが感じられる作品となっている点が特徴です。京都工芸繊維大学美術工芸資料館蔵、90cm×116.3cmの作品です。
「タジカラ男」も、フット・ペインティングで描かれた作品のひとつ。赤と黒の色彩で描かれている力強いタッチが非常に印象的な作品となっています。かつては兵庫県加西市により購入されたものの、2017年に尼崎市に寄託されています。
赤一色で円を描くようにキャンバスいっぱいに描かれた、「浄風吹炎」も、フット・ペインティングで描かれた作品のひとつであり、ダイナミックな印象を受ける作品となっています。現在は富山県美術館に所蔵されています。
「赤い旗」は白髪一雄が手がけたシルクスクリーン作品のひとつです。作品の中央部分に描かれた、風に力強くなびいている赤い旗が印象的。この赤い旗から、力強いエネルギーやパワーが感じられる作品です。
1958年に発表された「作品I」は、182.8×243.0cmのサイズの作品。白髪一雄が手がけた他の作品と同様に、非常に力強さが印象的な作品である点が特徴となっています。現在は兵庫県立美術館に所蔵されています。
赤や黒などの絵の具を使って描いた力強い作品が多い白髪一雄作品の中でも珍しく、白一色で描かれた点が特徴。彫刻のように感じられる絵の具の盛り上がりなど、一色で描かれているからこそ細かい部分もじっくりと鑑賞したくなる作品です。
まるで動物園で見ることができるような、大きな鳥の檻が描かれている作品で、現在は尼崎市が所蔵しています。さまざまな美術展で展示されることもあるため、こちらの作品を鑑賞したい場合は国内の美術展情報をチェックしておくと良いでしょう。
白髪一雄がフット・ペインティングでの制作を始める前に描かれた、最初期の作品です。船や人など描かれているものがはっきりとわかる、白髪一雄作品の中では珍しいともいえる作品となっています。尼崎市に所蔵されています。
フット・ペインティングで描かれた作品です。さまざまな青色や朱色、黄色がキャンバスの上で入り混じり、ぶつかり合っているという構図となっています。勢いが感じられる部分と勢いが止まる部分が絵の中で混在している作品です。
白いキャンバスに、黒を中心とした油絵具を使いアクション・ペインティングにて描かれた作品です。白髪一雄独自の技法であるアクション・ペインティングが持つ魅力を十分に感じられる点が特徴といえるでしょう。
白髪一雄が洋画家として歩み始めた初期の油彩画です。この時期の作品は現存するものが少ないことから、非常に貴重な作品のひとつとなっています。この作品は、中国文学やドイツ文学に影響を受けたものであるとされています。
白髪一雄がアクション・ペインティングを始める前の初期に描かれた作品となっています。こちらの作品は、徐々に抽象画に変化していった1950年代のものであり、白髪一雄の出身地である尼崎市にある白髪一雄記念室に所蔵されています。
白髪一雄が60年代以降から関心を深めていた密教の影響を受け、制作されたうちの一作。素足に代わって長いヘラを用いて制作されており、密教的な妖しさや濃密な精神性が表現されています。
白髪一雄の代名詞とも言える、アクション・ペインティングによって描かれた一作。海外での人気が高い水滸伝シリーズの1つで、兵庫県立美術館に所蔵されています。
流血のような鮮烈な赤が印象的な作品。水滸伝シリーズの1つで、同シリーズの「天空星急先鋒」や「天暗星青面獣」などと共に兵庫県立美術館に所蔵されています。
1959年に発表された作品。2018年にパリで開催されたサザビーズオークションにおいて、その年の日本人作家の作品で最高額となる約11億3,000万円で落札されています。
1970年に大阪万博に展示されたことで話題となった作品。2014年にパリで開催されたサザビーズオークションに出品され、当時の日本人作家の最高記録となる約5億円で落札されています。
白髪一雄の代表作「水滸伝シリーズ」全108点のうちの1つ。水滸伝に登場する豪傑の名がタイトルにつけられており、赤と青の絵の具を使って描かれた白髪一雄らしいダイナミックな作品です。
仏教を主題の中心にして作品制作に取り組んでいた1970年代の作品。サッダルマ・プンダリーカ・スートラは法華経を意味するサンスクリット語で、白蓮華をモチーフにしたのであろう白い円相が大きく描かれています。
線のねじれた動きや流れが描かれており、白髪一雄ならではのダイナミックな作風とはまた違ったエネルギーを感じさせる作品です。
アクション・ペインティングならではのダイナミックさを抑えて描かれており、これまでとは違う表現を味わえる作品です。
1962年に制作された水滸伝シリーズの1つ。短気で無鉄砲な性格から急先鋒とあだ名された豪傑の名に相応しい、躍動感のあるダイナミックな線が印象的な作品です。
主に1959年からの6年間に渡って集中して制作された、白髪の代表作「水滸伝シリーズ」の1つ。天究星没遮攔は1960年に制作され、現在は兵庫県立美術館に所蔵されています。
真っ赤な液体に牛の肝臓が入った立体作品。オリジナルは1956年に制作され、2001年に再制作されています。2020年に東京オペラシティアートギャラリーで開催された大規模個展にて、再制作を複製した作品が展示されました。
尼崎市出身でもある白髪一雄。地元では、白髪の画業を広く世に紹介することを目的に、尼崎市総合文化センター内(4F)に白髪作品の常設展示室「白髪一雄記念室」を設けています。
同センターは、尼崎市の文化発信の中核施設。その一室を白髪作品の常設展示室としていることからも、いかに白髪が地元で愛されている芸術家であるかが分かります。
同センターに収蔵している作品は、市が所蔵する白髪作品約120点に、白髪の遺族から寄贈・寄託された作品を合わせた計4,000点ほど。公開されて著名となった作品も数多くある一方で、デッサンやスケッチブック、写真、画材道具など、資料として貴重な品々も数多く収蔵されています。
展示室内の作品は年に2回の頻度で入れ替え。定期的に展示室へ足を運ぶことで、常に新たな発見があるでしょう。
また、近年は新型コロナの影響で中止されていたものの、年に1回のペースで白髪の企画展も実施。再開が期待されています。
センター内では、白髪の図録や書籍、および様々なグッズ(クリアファイル、Tシャツ、トートバッグ、ポストカードなど)も販売。常に白髪を感じられる日用品として、来館者から高い人気を集めています。
開室時間は10:00~17:00まで(火曜日を除く)。観覧料は一般200円、大学・高校生100円、中学生以下は無料です。
「現代アート」はデュシャンから始まりました。いまでは当たり前になっているような手法を、最初に行い、賛否すらものともしなかった。これが「アーティスト」という存在なのでしょう。
現代アートから骨董・古美術までを扱う「本郷美術骨董館」代表。20歳から草間彌生の作品を集めているコレクターでもある。BSフジで放送中の、若手日本アーティストを紹介する番組「ブレイク前夜~次世代の芸術家たち~」制作提供も行っている。お店では鑑定をするかたわら、テレビ・ラジオなどにも出演し、現代アート界を盛り上げている。
「具体美術会」の国際的評価が高まる中で描かれた「天空星急先鋒」。暴力性や血なまぐさなどを表現する作品のイメージに合致させるかのように、少年時代から愛読していた「水滸伝」の豪傑たちの名を作品名に付しています。