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キース・へリングはアメリカの芸術家であり、ストリートアートの先駆者と言われている人物です。日本でも非常に人気が高く、UNIQLOのTシャツのデザインに採用されるなど馴染みあるデザインではないでしょうか。中には彼の名前を知らなくても、デザインは見たことがある!と思う人もいるかもしれませんね。
そんなキース・ヘリングは1958年アメリカのペンシルベニアで誕生します。彼が一躍有名にした出来事と言えば1980年にニューヨークの地下鉄構内での「落描き」。サブウェイ・ドローイングと呼ばれ、使用していない掲示板に黒い紙をはり、その紙の上にチョークで絵を無断で描いたのです。このシンプルかつリズミカルなデザインの絵はニューヨークの通勤客に好評で、ここから徐々に注目を浴びる芸術家として名が広まるようになっていきます。1980年から1986年の間で数多くの個展や展示会を開催し、世界的にもその名が知れ渡るように。ニューヨークに留まらずシドニー、リオデジャネイロ、アムステルダムなど世界各国で壁画を制作していきます。有名な場所でいえば、ベルリンの壁の「チャーリー検問所」の壁に描かれました。
彼の芸術は壁画だけに収まらず、タイムズスクエアのビルボードアニメーションや舞台デザインなど幅広く活動の場を広げており、自身のグッズを販売しているポップショップも。1983年には初めて日本に訪れ、展示会やポップショップ、ワークショップなど開催されました。
キース・ヘリングは芸術への貢献だけでなく、社会活動にも力を入れていた人物として有名です。HIV感染していることが診断された翌年の1989年には、HIVの財団を設立。作品を通して、HIV感染を予防するメッセージを訴えており、AIDS撲滅に向けた活動を積極的に行っています。Act Against AIDSの最初のポスターを描いたのは彼です。
1990年2月HIVの合併症によって、31歳という若さで死去。彼の死を悼み、同年5月4日にニューヨークのセント・ジョン・ザ・ディヴァイン大聖堂にて追悼式がおこなわれました。彼の遺作となったのは、イタリアのピサ中央駅のそばにある教会の壁に描かれた「Tuttomondo」。またキース・ヘリングの生誕54年を記念し、2012年5月4日にはGoogleの公式サイトのロゴがキース・ヘリングのデザインのバージョンになっており、未だに彼の人気がうかがえる出来事と言えるでしょう。
この作品もキース・ヘリングの代表作と言っていいものでしょう。ハサミの先端部分は人間が手を頭の上で輪っかを作っているようなデザインになっており、そのハサミで糸を切るという、見る人によって様々な印象を与える作品になっています。もちろんキース・ヘリングらしい色味やタッチがあり、可愛らしさも感じられるようなデザインです。
僕の命はあと5ヶ月かもしれないし5年かもしれない。わかっているのは僕の命はいずれ終わるってこと。だから僕にとっては今が大切なんだ。命が終わるまでに出来る限りのことをことやりたい。人々の心に残るアーティストこそが本当のスペシャリストなんだ。僕は死ぬかもしれないけれど本当に僕が死ぬことはない。だって、僕はみんなの中に生きてるんだから。
私にできる世界への貢献は描くことだけだ。私はできる限り描く。それだけだ。
山梨にある「中村キース・ヘリング美術館」をご存じでしょうか?キース・ヘリングの作品を堪能することができる美術館で、新薬の開発などに携わった経験を持つ中村和男氏によって2007年に設立されています。 キース・ヘリングが生きていたアメリカの時代はインフレが激化し、社会は混沌としていました。しかし、そんな社会の中でもアメリカの現代美術は注目を浴びていきます。キース・ヘリングは混沌とする社会に対して多くのメッセージを投げかけたかったのでしょう。
2007年設立時には「キーフォレスト871228 キース・へリングの世界 混沌から希望へ」展を開催し、話題になりました。また山梨県建築文化賞(平成27年度 建築文化賞・一般建築物等の部門)を受賞し、さらにTOKYO FMが主催している「Tree of Loveポエトリー・リーディング Think about AIDS」に参加するなど、同館はキース・ヘリングの意思を継ぎ積極的にAIDS予防啓発の活動を行っています。
この美術館を設計したのは北川原温氏。北川原温氏は日本の現代建築をリードする建築家の一人で、これまでにも多くの作品が世界に紹介されています。そんな北川原温氏が手掛け、テーマは「闇から希望へ」。キース・ヘリングが放つ芸術を体感できるような大胆な設計が魅力的な美術館です。ただ作品を飾る静かな美術館というよりは、美術館の空間全体を通してキース・ヘリングの思想や人生、時代などを感じとることができるでしょう。2015年にはリニューアルオープンをしており、「生命の荒々しさ」がテーマになっているそうです。波動をイメージした外壁や、中庭には稲妻をモチーフにした壁がデザインされており、斬新すぎる設計も訪問した人を魅了してくれるはず。
かしこまったイメージのある美術館を体感型にアレンジしており、キース・ヘリングを存分に感じさせてくれます。美術館が苦手という方も是非訪れてもらいたい美術館でしょう。
参照元:山梨県公式HP/平成27年度山梨県建築文化賞について
現代アートから骨董・古美術までを扱う「本郷美術骨董館」代表。20歳から草間彌生の作品を集めているコレクターでもある。BSフジで放送中の、若手日本アーティストを紹介する番組「ブレイク前夜~次世代の芸術家たち~」制作提供も行っている。お店では鑑定をするかたわら、テレビ・ラジオなどにも出演し、現代アート界を盛り上げている。
キース・ヘリング独特な流れるようなタッチとポップな雰囲気を感じられる作品です。アメリカの自由の女神をモチーフにしており、だれが見ても明るくなるような作品ではないでしょうか。色使いも大胆で、見ている人を元気にさせるような作品はキース・ヘリングファンの中では特に評価が高い逸品ともいえるでしょう。