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Jeff Koons。キッチュ性を表現した作品で知られる、アメリカ現代アート界の代表的な美術家(1955年~現在)。ステンレスに鏡面塗装を施した巨大な彫刻作品が有名です。作品に高値がつく現代美術家の一人とされています。
生まれはアメリカのペンシルベニア州。シカゴ美術館附属学校を卒業後、メリーランド美術大学大学院で美術を学びました。1977年、ウォールストリートの仲買人をしながら、アーティスト活動をスタートさせます。
1985年、水槽の水にバスケットボール3つを浮かべた作品を発表し、新たな頭脳派彫刻作家として名前を知られることに。その後も、キッチュ性をテーマにしたオブジェ作品を次々と発表します。
1990年開催のベネチア・ビエンナーレでは、婚約者だったポルノ女優・チチョリーナとのベッドシーンを描いた作品が話題に。翌年にもニューヨークの個展で、チチョリーナとの性行為をモチーフにした絵画や彫刻作品を発表し、話題を呼びます。その他にも、マイケル・ジャクソンとバブルス(ペットのチンパンジー)の彫刻作品など、多くの話題作を発表。
2014年に開かれたホイットニー美術館での回顧展では、同館において当時多くの動員数を記録。さらに2019年には、『ラビット(Rabbit)』という彫刻作品が、オークションで9,110万ドル(約100億円)という金額を叩き出します。存命のアーティスト作品の中で史上最高の落札額となりました。
このように、非常に高い人気と影響力を持つジェフクーンズですが、美術批評家からの評価は真っ二つに分かれます。「現代のミケランジェロ」といった賞賛もあれば、「キッチュで下品、商業的」との酷評もあるのです。
また、ヴェルサイユ宮殿で行われた回顧展で「ルイ14世の子孫の1人が先祖を冒涜するものだ」と保守派から激しい批判を受けたり、著作権侵害で訴えられたりと、スキャンダラスな一面でもよく知られています。
ステンレス製の彫刻「ラビット」。2019年のクリスティーズによる競売で約100億の値がつき、存命のアーティストとしては当時史上最高額を更新しました。
落札者のロバート・ムニューシンは、アメリカ財務長官の息子というセレブリティ。
アトリエに100人以上のスタッフを雇い、ファクトリースタイルの制作活動を行っているジェフ・クーンズ。
オマージュやリスペクトを超えた作品の数々は、常にアートファンからは賛否両論。訴訟問題にも多く発展しています。
とはいえ、2014年、マンハッタンにあるホイットニー美術館で開催された回顧展「A RETROSPECTIVE」では、当時多くの動員数を記録するなど、人気もある人物。
今時の言葉でいうと「炎上系アーティスト」といったところです。
ヴィトンとのコラボ作。ダ・ヴィンチやゴッホなど、西洋画家の作品を再現したものですが、そのままっちゃあそのまま。
右は写真家のアート・ロジャーズの作品「Puppies」。左はクーンズの彫刻「String of Puppies」。自分の写真が彫刻に使われたことに気がついたロジャーズは、1989年に著作権侵害の裁判を起こします。
これに対し、クーンズは写真利用を「フェア・ユースだ」と主張します。訴訟のたびにクーンズが主張する「フェア・ユース」とはなんなのかというと、アメリカの著作権法にある権利のこと。
簡単にいうと、「批評や解説、報道、研究、調査等を目的とする著作権のある著作物の使用は、著作権の侵害とはみなさない」というものです。
こちらの裁判は、クーンズが敗訴。著作権侵害が認められた形です。
他にも著作権侵害についての裁判を多数起こされているクーンズ。新しいものでは2018年の「Fait d'Hiver」をめぐる裁判です。
こちらは2017年にニューヨーク・ロックフェラーセンターに設置されたバレリーナ像。
そしてこちらがウクライナの彫刻家・オクサーナ・ジニクルプの作品。こちらも発表当初は盗作と言われたものの、実はライセンスを受けていたことがクーンズのコメントにより判明。
しかし、今度は作品発表時に元の作品を明らかにしなかった点について批判の矛先が向きました。
クーンズの訴訟は盗作問題だけにとどまらず、作品納品遅延によるものも。とにかく話題に事欠かない人物なのです。
参照:美術手帖 https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/18814、ロシア ビヨンド https://jp.rbth.com/arts/2017/05/24/769455、アートワールドの法と論理 https://www.artlawworldjapan.net/blog/contemporary-art-copyright、https://www.artlawworldjapan.net/blog/balloon-dog、AFP https://www.afpbb.com/articles/-/3196838、HYPEBEAST https://hypebeast.com/jp/2018/7/jeff-koons-gagosian-dismisses-lawsuit-nondelivery
ジェフ・クーンズの近作は、風船ウサギに塗装を加えた、よりジャスパー・ジョーンズ的な作品になっている。モチーフは少年期などの記憶によるものらしく、そういう意味ではもはや「普通の具象彫刻」と言えないこともないか。#新型コロナのおかげで自宅で美術鑑賞 pic.twitter.com/VJNmmlpF5P
— 伊藤隆介 (@RyusukeIto) March 6, 2020
Jeff Koons[b.1955]
— カンタン現代アートbot (@artistsbot) March 1, 2020
バルーンアートのような金属の大きな彫刻で有名なジェフクーンズ
一番最初にヴェルサイユ宮殿で展示して怒られた人。キッチュという古臭いとか安っぽいっていうイメージを大好きなおじさん。 pic.twitter.com/iugxgy5jSZ
いちいち他人の忠告なんか聞いていたら超一流のアーティストには成れない。世の中からどれだけバッシングされても、スタジオの従業員に愛想つかれて全員辞めても、奥さんとの狂ったセックス・アートを作り続けたジェフ・クーンズは現代アートの最高峰だ。 pic.twitter.com/01LQ0W8AQf
— 笹山直規 4月2日個展 渋谷 Room_412 (@nega_death_13) January 24, 2020
アーティストと言うと、「外に出たがらない」ようなイメージがあるかもしれませんが、ジェフ・クーンズは映画にも出てしまう出たがりアーティスト(笑)。
好きか嫌いか、これほど両極端の反応があるアーティストも珍しいのではないでしょうか。
私は、今の時代ならではというところがあって、好きな作家です。
現代アートから骨董・古美術までを扱う「本郷美術骨董館」代表。20歳から草間彌生の作品を集めているコレクターでもある。BSフジで放送中の、若手日本アーティストを紹介する番組「ブレイク前夜~次世代の芸術家たち~」制作提供も行っている。お店では鑑定をするかたわら、テレビ・ラジオなどにも出演し、現代アート界を盛り上げている。
「キッチュ(まがいもの、芸術気取りのもの)」と評されることが多いジェフ・クーンズ。
この「バルーンドッグ」に代表されるような、ステンレスに鏡のような塗装を施した彫刻作品が有名であることや、あまりにも商業的なスタイルに由来するもの。