マンガ家/大阪芸術大学教授・里中満智子
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里中満智子
アートを「描く」楽しみ
70歳を超えてなお、大阪芸術大学教授、公益社団法人日本漫画家協会の理事長と、多忙な日々を送る里中先生。「絵を描く」ことを気軽に楽しんでほしいと話してくれました。
インタビュー
里中満智子さん
16歳でマンガ家デビュー。ドラマ化された「アリエスの乙女たち」「天上の虹」など、代表作は多数。描いた作品数は2020年時点で500を超える。
- 近年はSNSなどでどんな人でも全世界に作品を配信できるという、国民総作家も可能な時代になりましたね。
- 里中さん
- 間口が広がるのは、とても良いことだと思います。紙とペンさえあれば描けるというハードルの低さが“描く”のすばらしさだったのですが、今やiPadやスマホだけでも描ける時代になり、ますますハードルが下がっていますね。
- その反面、まったく描かない人は描かないと、二極化も進んでいるような気がします。「ロム専」ならぬ「見る専」のような。元々の絵を描かない人自体のハードルはとくに下がっていないのかもしれません。
- 里中さん
- 絵は見せるためのものだけではありません。好きに描いたり、元々は子ども時代に、クレヨン片手にスケッチブックに好きに描いた、あの感覚でいいんだと思います。「大人のぬりえ」なんかも一時期話題になりましたが、描くのが苦手だったら、そういう楽しみ方もありますね。
- 里中先生は大阪芸術大学のキャラクター造形学科の学科長を務めていらっしゃいますが、たとえば10年前と今とで、描くというものに関して、生徒さんたちの感覚が変わったなと思うようなことはありますか?
- 里中さん
- 生徒さんよりも、親御さんが変わってきたかなと思います。最近は大学の入学式に親御さんがいらっしゃることも多いのですが、その中で「私も昔マンガ家を目指していて」と言われることが増えました。
- 今の大学生の親御さん世代というと、50代くらいですね。ジャンプや少女マンガもにぎやかだった時代なので、その影響ですかね。
- 里中さん
- 言われたときはいつも、「これからも描いてください」とお返事するようにしています。
絵を描くことを辞めるタイミングの多くは進学、受験、就職、出産など人生の転機ですが、そこは多くの人が描き始めるタイミングでもあります。
いつからでもまた簡単に始められるのがいいところですから。
- 確かに、今子育てマンガなどがインスタで数多く配信されていますからね。
- 里中さん
- 辞めたものを再度始めるときは、最初に始めるとき以上に腰が重かったりしますが、いつまでも続けられる趣味なので、ぜひ再開してほしいですね。
私の父も、水墨画が趣味だったのですが、亡くなる間際まで描いていました。いまでも、作品を飾っています。
- モノとして残る、思い出が形になるというのも絵のいいところですね。
- 里中さん
- はい、親が子どもの落書きに愛着を感じるように、子が親の絵に思い出を抱く。1枚が家族の思い出になることもありますし、“描く”という行為にとどまらないこともしばしばありますよね。
- なにより、手を使うことでボケなさそうです。
- 里中さん
- 実際に絵を描くことは認知症予防になるといった論文もあります。父も、絵のおかげか、ボケませんでしたね。
- 一生の趣味としても、思い出としても、認知症防止でも、“描く”ことはいいことですね。
- 里中さん
- はい、上手い下手を気にすることなく、楽しんでください!
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