このサイトは 「本郷美術骨董館」をスポンサーとして、Zenken株式会社が運営しています。
広告写真などを撮影し、これを独自の世界観で再構成する作風等で知られるリチャード・プリンス。作品そのもののメッセージ性はもとより、その作品を生み出すプロセスや手法において、現代アート界ではたびたび物議を醸す話題のアーティストです。
1949年、パナマ運河のアメリカ支配地域に生まれたリチャード・プリンス。高校を卒業したのち、ヨーロッパでの生活を経て、1973年からニューヨークに定住。タイム社に就職し、記事の作成フォローなどの仕事をしていました。
タイム社での勤務時代、ライターのために切り抜いた記事の余りとして残った数々の広告写真等に注目。改めて切り取ったり再撮影したり拡大したりなどし、徐々に自分の作品スタイルを確立していきました。
1980年、CEPAギャラリーにて、かつてない新たなプロセス・手法で生み出した作品の数々を発表。リチャード・プリンス初の個展です。発表された作品群は徐々に注目を集め、以後は様々な地域で個展を開催するにいたりました。なお2021年現在では、サンフランシスコ近代美術館、ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館、ニューヨーク近代美術館にプリンスの作品が常設されています。
他人が作ったものを再構成する、という独自の手法で多くの作品を生み続けてきたプリンス。この手法から生まれた最も有名な作品は、のちに紹介する『無題(カウボーイ)』でしょう。近年では、他人のInstagramに掲載されている写真を引用し、プリンスみずからのコメントを添えた作品が大きく話題となりました。
2021年で72歳を迎えるリチャード・プリンス。社会風刺をベースに据えた斬新な作品の数々は、これからも世界に刺激を与え続けることでしょう。
引用元:THE MET https://www.metmuseum.org/ja/art/collection/search/283742
引用元:Art x Together https://www.hidekiiinuma.com/db/richard-prince/
リチャード・プリンスの中心的な作品の一つが、看護師を描いた一連の作品群。ルイヴィトンとのコラボ、ロックバンドグループ「ソニック・ユース」のアルバムジャケットへの採用などで、広く一般にも知られたシリーズです。作品群で描かれている看護師は全員ナースキャップを着用し、口を大きなマスクで覆っています。
『無題(カウボーイ)』の発表にあたり、リチャード・プリンスは次のようなコメントをしたと言われています。
「(アメリカ社会は)本物とほとんど変わらないが本物ではないもの(に魅力を感じる)」
引用元:THE MET https://www.metmuseum.org/ja/art/collection/search/283742
"The problem with art is, it's not like the game of golf, where you put the ball in the hole or you don't put the ball in the hole. There's no umpire. There's no judge. There are no rules. It's one of the problems, but it's also one of the great things about art: it becomes a question of what lasts."
(訳)「アートの問題は、ボールを穴に入れたり、ボールを穴に入れなかったりするゴルフのゲームとは違う。審判員も裁判官もいない。ルールもない。 。それは問題の1つですが、アートの素晴らしい点の1つでもあります。それは、何が続くかという問題になります。」
引用元:Wikipedia https://translate.google.com/translate?sl=auto&tl=ja&u=https://en.m.wikipedia.org/wiki/Richard_Prince
リチャード・プリンスの作品のみを常設する美術館は、日本国内にはありませんが、過去には日本のギャラリーで個展が開催されたこともあります。
開催された時期は2015年4月3日~5月30日。開催場所は東京原宿にあるアート・ギャラリー「BLUM & POE 東京」でした。
発表された作品は、プリンスの中でも特に有名なシリーズ「New Portraits」。プリンス自身がInstagramを検索し、作品になりそうな写真をピックアップし、プリンス自身のコメントを添えて発表したものです。FOXニュースによると、ニューヨークで開催された同作品群の個展では、一部の作品が約1000万円で落札されたとのこと。Instagramを撮影した本人には無許可で作品化したこともあり、当時、「New Portraits」は様々な物議を呼びました。
なお、原宿で開催された先の個展は、日本では20年ぶりとなるプリンスのイベントでした。今後も日本で個展が開催されるよう期待しましょう。
現代アートから骨董・古美術までを扱う「本郷美術骨董館」代表。20歳から草間彌生の作品を集めているコレクターでもある。BSフジで放送中の、若手日本アーティストを紹介する番組「ブレイク前夜~次世代の芸術家たち~」制作提供も行っている。お店では鑑定をするかたわら、テレビ・ラジオなどにも出演し、現代アート界を盛り上げている。
1989年に発表された、リチャード・プリンスの最高傑作と評される作品。アメリカでは古くから西部の開拓者として人々の心に浸透しているカウボーイ。神話さながらのヒーローとしてのイメージが定着しているカウボーイの複製(マルボロの広告)を、さらにプリンスが写真で複製することで、プリンスは「実体験よりも常にイメージに惹かれるアメリカ社会」を痛烈に批判しました。