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1962年制作の「アキュミレーションNo.1」、1963年制作の「The Man」に続いて、1964年に制作された作品になります。これらの作品に共通するのは、いずれも男根状の突起をモチーフとしながら、男性優位という1960年代にはびこっていた風潮をユーモアで笑い飛ばすという試みがなされている点になります。
と言うのも、草間彌生は元々の生まれが保守的な思想を持つ信州の旧家で、幼少の頃から「セックスは汚いもの」と刷り込まれていたため、やがて成長すると、男根への恐怖心や嫌悪感を抱くようになってしまったのだそうです。そうした負の感情を克服するために手掛けたのが、何を隠そう、これらの作品群。
なかでもこの「トラヴェリング・ライフ」は、高みへ登るための梯子に、布でこしらえた無数の男根をあしらうこことで、人生を旅ととらえ、その可変性や刹那性も表現しているとされています。同時に、性への恐怖というものに縛られている草間自身の人生を投影したものであるという説もあります。
トラヴェリング・ライフは京都市左京区岡崎の岡崎公園内に立地する京都国立近代美術館に所蔵されています。1962年の法改正により国立近代美術館の分館が設置可能となり、翌1963年にオープン。1967年には 東京国立近代美術館より独立し、京都国立近代美術館となりました。1986年には、現在の新館が完成しています。関西・西日本の美術に比重を置き、京都画壇の日本画、洋画などを積極的に収集、展示しており、また、かのパブロ・ピカソの『静物—パレット、燭台、ミノタウロスの頭部』も所蔵していることで知られています。