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「UNTITLED(BROKEN TREASURE)」は、奈良美智が1995年に制作したアクリル画です。
画面いっぱいに描かれているのは、奈良美智の作品によく登場する、頭部の大きな子どもの姿。大きな目で斜め上を見上げるように立つ女の子は、どこか不機嫌そうにも、何かを訴えているようにも見えます。オレンジ色の服や淡い背景にはやわらかさがありますが、目つきや表情からは、かわいらしさだけでは終わらない緊張感が漂います。
この作品で印象的なのが、女の子の左手に握られた双葉です。よく見ると、茎は途中で折れてしまっています。タイトルにある「BROKEN TREASURE」は、直訳すると「壊れた宝物」。小さな草花のような存在が、女の子にとって大切なものだったのかもしれません。
折れた双葉を手にした女の子は、無言のまま、こちらを責めているようにも、ただ見せているだけのようにも受け取れるでしょう。はっきりとした物語は描かれていませんが、その余白があるからこそ、見る人は「何があったのか」「この子は何を感じているのか」と想像をめぐらせることになります。
奈良美智の描く子どもたちは、単にかわいい存在ではありません。孤独、怒り、不安、反抗心、傷つきやすさなど、言葉にしにくい感情を抱えた存在として描かれています。「UNTITLED(BROKEN TREASURE)」の女の子も、幼さのなかに強いまなざしを持ち、見る人の感情を静かに揺さぶる作品です。
奈良美智は、1959年に青森県弘前市で生まれた現代美術家です。愛知県立芸術大学大学院を修了後、1988年にドイツへ渡り、デュッセルドルフ芸術アカデミーで学びました。その後ケルンでの活動を経て、2000年に帰国しています。
奈良美智の作品では、大きな頭と印象的な瞳を持つ子どもや犬が多く描かれます。一見すると素朴で親しみやすいモチーフですが、表情には孤独や反抗、怒り、寂しさのような感情がにじんでいます。かわいらしさと不穏さが同居している点が、奈良作品の大きな魅力です。
また、奈良の表現には、幼少期の記憶や音楽、旅先での経験などが深く関わっています。公式略歴でも、9歳ごろから聴き始めた音楽に強い影響を受けていることが紹介されています。絵画だけでなく、ドローイング、立体作品、インスタレーションなど幅広い表現を手がけ、国内外で高く評価されています。
「UNTITLED(BROKEN TREASURE)」は、徳島県徳島市にある徳島県立近代美術館に所蔵されています。
徳島県立近代美術館は、文化の森総合公園内にある美術館です。美術作品の展示公開、調査研究、収集保存、教育普及を活動の柱としており、「人間」をテーマにした近代・現代の絵画や彫刻、現代版画、徳島ゆかりの美術作品などを収集しています。
所蔵作品は常に展示されているとは限らないため、「UNTITLED(BROKEN TREASURE)」を目当てに訪れる場合は、事前に公式サイトの展示情報を確認しておくと安心です。2024年度の所蔵作品展「“Z”と呼ばれる時代」では、本作品が出品作品として紹介されていました。