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暗黒

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作品解説

白髪一雄による《暗黒》は、1995年に制作された作品です。キャンバス地の中央に、幾重にも重なる黒い筆致が渦を巻くように積み上がり、周囲には細かな飛沫が散っています。厚く盛られた黒い絵具の層は、遠目には書のようにも見えますが、実際は天井から吊るしたロープにつかまり、足で絵具を押し広げるフット・ペインティングによって描かれたもの。身体の動きの痕跡が、そのまま画面に残されている点が本作の見どころです。

本作のように黒一色に近い構成の作品は、白髪の作品群のなかでも精神性を強く感じさせる系譜に連なります。白髪は1971年に比叡山延暦寺で得度を受けており、その後は仏教や密教にちなんだ言葉を作品タイトルに用いる機会が増えていきました。1995年制作の《暗黒》もその流れの一枚で、赤や黄などの色を抑えて黒に絞り込むことで、力強さと静けさが同居する画面をつくり出しています。

タイトルの「暗黒」は、修行を通して対峙する自らの内面や、形が生まれる前の状態を思わせる言葉です。渦を巻くように積み上がった黒い絵具の層と、飛び散る微細な絵具の跡。勢いのある筆致だけを見れば激しい画面に映りますが、黒に絞り込まれた画面と重いタイトルが響き合うことで、勢いだけでは説明できない密度のある空気が生まれています。

作品詳細

作家紹介:白髪一雄について

白髪一雄(しらが かずお)は1924年、兵庫県に生まれ、京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大学)で日本画を学びました。戦後は洋画に転じ、1955年に吉原治良が率いる前衛グループ「具体美術協会」に参加。以降、身体を絵画に持ち込む独自の表現を追い続けました。

代表的な手法は「フット・ペインティング」。天井から吊るしたロープにつかまり、床に広げたキャンバスの上を素足で滑走しながら絵具を押し広げていく制作方法です。1971年には比叡山延暦寺で得度を受け、以降は仏教や密教にちなんだタイトルを付ける作品が増えていきます。《暗黒》は、その流れのなかで晩年に手がけられた一枚です。

暗黒を見られる美術館

《暗黒》は、広島県広島市南区にある広島市現代美術館に所蔵されています。1989年に開館した、日本で最初の公立現代美術館です。建築家・黒川紀章が設計を手がけ、市の中心部を見下ろす比治山公園の高台に立っています。

戦後の現代美術を中心に、およそ1,700点をコレクション。「戦後の現代美術の重要な流れを示す作品」「ヒロシマと現代美術との関連を示す作品」「若手作家による将来性のある作品」の3本柱で収集を続けています。白髪一雄をはじめ、ヘンリー・ムーア、フランク・ステラ、アンディ・ウォーホル、草間彌生など、国内外の作家の作品を所蔵しています。

作品は入れ替え制のコレクション展で紹介されるため、《暗黒》が公開されているかは会期によって変わります。作品を目当てに訪れる場合は、公式サイトで最新の展示情報を確認してから足を運ぶと安心です。

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